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CME保育士コラム

株式会社と社会福祉法人の運営。何が違う?

2000年、待機児童の解消等のために設置主体制限の撤廃が行われ、それまでは原則として市区町村や社会福祉法人に限られていた保育所設置が、株式会社やNPO法人による設置も可能となりました。それから20年がたった今は、企業主導型保育園や事業所内保育園で知られるように多くの会社が保育事業に参入しています。

 

また、市区町村などの地方公共団体が設置した公設の保育所であっても、運営は社会福祉法人や株式会社などの民間業者に委託されている、いわゆる公設民営の保育所もあります。幼稚園が設置者管理主義であるのに対して、保育所は公設民営が可能です。

 

保育所の設置主体で最も多い「社会福祉法人」と、設置主体制限の撤廃以降で保育事業に新規参入した設置主体の中では最も多い「株式会社」、今回はこの2つの保育所運営にどのような違いがあるのか解説していきます。

 

株式会社による保育事業参入は増えている

1990年の改正社会福祉事業法のなかでは、保育を含む福祉事業の運営主体を『国、地方公共団体、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者(社会福祉事業法第3条)』と示されていましたが、その後、法律名も改正された2000年の社会福祉法(旧社会福祉事業法)では『社会福祉を目的とする事業を経営する者』と広く規定されました。

これを踏まえ、保育園も株式会社やNPO法人などによる設置・運営が可能となったのです。

 

厚生労働省が発表している中で最新の調査「保育所の設置主体別認可状況等について(平成28年時点)」では、保育所全体数のうち1割が社会福祉法人以外の民間業者によるものであることが示されています。内訳は以下の通りです。

 

・保育所全体数  23,475

・市区町村     8,948(38.5%)

・社会福祉法人  12,268(52%)

・会社       1,264(5.5%)

・その他       995(4%)

 

「その他」には、学校法人(359園)、宗教法人(217園)、NPO(142園)、個人や財団法人、社団法人が含まれていることから、株式会社による保育所設置は、社会福祉法人以外の民間業者の中では断トツの多さだと分かります。

 

この調査結果が発表された2016年は、企業主導型保育事業が始まった年です。前年の2015年は、子ども子育て支援新制度によって小規模保育事業や事業所内保育事業がスタートしています。このように、市区町村や社会福祉法人以外の事業者も保育事業に参入しやすいよう制度が整備されており、制度開始から数年経過した現在は、この調査結果よりも株式会社の保育所設置の割合は増えていると言えるでしょう。

 

設置のみならず、運営も同様です。2000年に保育所設置主体制限が撤廃されたのは先述の通りですが、これと同時に、公立保育所の運営業務の委託先についても制限が撤廃されました。社会福祉法人だけでなく株式会社にも運営業務を委託できる、というものです。

2003年には、地方自治法の一部改正により業務だけでなく施設管理業務をも民間業者に任せる「指定管理制度」が発足したことも後押しし、公設民営の保育所が増えてきています。

 

 

株式会社と社会福祉法人の違い

株式会社と社会福祉法人の違いは何でしょうか。

 

1.絶対的な違いとは

まず根本的に違うのは、営利か非営利か、です。

株式会社は、もちろん営利企業。つまり、利益を得るために設立された企業です。対して社会福祉法人は、非営利です。利益を得るために社会福祉事業を行うことはできません。主とする社会福祉事業を超えない範囲で収益事業を行うことは可能ですが、収益事業から生じた利益の使い道には要件があります。法人税や事業税などで優遇されている分、資産運用や組織運営の在り方において高い透明性が求められているためです。

 

「非営利性」の他にも、「公益性」や「都道府県知事などの主務官庁の許可・認可」という基本的要件が社会福祉法人にはあります。

2つの違いを一言で言うとするなら、自由度が高いのが株式会社、税制が優遇されているぶん事業内容や資金繰りが制限されているのが社会福祉法人だと抑えていくといいでしょう。

 

そしてもう一つ、大きく違うのは、第一種社会福祉事業に株式会社などの民間業者は参入できないということです。

社会福祉事業は、第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業に分かれます。第一種社会福祉事業とは、「保護」の必要性が高い利用者を対象とした施設のこと。児童福祉分野なら、児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設、障害児入所施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設がそうです。公益性や安定性の高さが求められていることから、国や地方自治体、社会福祉法人による経営が原則とされています。

 

保育園は第二種社会福祉事業です。第二種社会福祉事業には、学童保育や障害児放課後等デイケアサービスなどがありますが、経営できる事業主体に制限はないので、届出を提出すれば事業を行うことができます。

 

 

2.保育園運営上の違い・傾向とは

ここからは社会福祉法人と株式会社、この2つの性格性の違いが保育園運営上に反映されている「傾向にある」ということについてです。

 

・事業内容

社会福祉法人:正社員で働くと法人内で異動になることもあります。保育士として、第一種社会福祉事業の施設で働くことも可能。地域貢献活動が義務付けられています。

株式会社:大企業になると、保育関連事業として学童保育や保育園備品開発事業など手広く事業を行っているところも。福祉事業以外でのキャリアアップも可能です。

 

・保育内容

社会福祉法人:役所や発達支援センターなど他機関との連携が密で、福祉目線や養護的関わりが必要な世帯のケーススタディが積まれているところが多いです。

株式会社:外部の講師を呼んだ課外活動や教材を多く使う保育園が多い傾向にあります。

 

・新規の保育園

社会福祉法人:法人設立から年数が長いところが多く、新規の保育園でも書類や保育士の人材など、基盤がしっかりしているところが多いです。

株式会社:主任保育士や園長の保育歴が短い傾向にあります。また、規模が小さい会社や保育事業歴が浅い会社だと、保育方針や書類、備品、行事など基盤が確立されてないことも。ITシステムを取り入れ、業務の効率化を図っているところが多いです。

 

・働き方

社会福祉法人:昔からの慣習が残っているところもあり、先輩が帰るまで帰れないという園やIT化の遅れで手書きの書類が多く仕事を持ち帰る園も株式会社と比べると多いです。

株式会社:IT化により保育以外の業務の負担が社会福祉法人より少なくてすみます。時短勤務や年度途中の産休・育休でも代替え職員の雇用など、柔軟に対応してもらいやすいです。

 

・給与や福利厚生

社会福祉法人:自治体によって給与に多少の差があります。

株式会社:会社によって給与の差が激しいです。特にボーナスはその傾向が顕著。しかし最近は、保育士人材を確保するために最低でも20万前後の給与額で募集しているところが多いです。

 

 

転職のポイント

このような株式会社と社会福祉法人の運営の違いから、転職する時のポイントを次のようにまとめました。

 

  • こんな人は社会福祉法人

・基本的な保育ニーズよりも福祉目線の支援や養護的関わりを学びたい人

・保育園のみならず、第一種社会福祉事業でも働きたい人

・就業先の保育園地域に何か貢献したい人

 

  • こんな人は株式会社

・外部の講師による課外活動や教材を多く使う保育園に勤めたい人

・福祉事業だけでなく、保育経験も生かせる他の事業にも興味がある人

・産休や育休、時短勤務などワークライフバランスの働き方を重視したい人

 

 

保育活動内容は園の特色によるものもあるため、社会福祉法人だからいいとか、一括りにして良し悪しを言うことはできません。

福祉目線が強い社会福祉法人では、利用児童に生活保護世帯の子どもがいても親の負担が少なくてすむよう別途教材費等を徴収しなくてすむ保育内容の範囲で実施し、一方で株式会社も、園の独自性を出すためにも、課外活動等を多く取り入れることで保護者のニーズに応える保育園が多いということです。どちらも、園児や保護者のことを観型保育が行われています。

 

繰り返しになりますが、先述の運営上の違いは、あくまでその傾向にあるというものです。

社会福祉法人のなかでもIT化が進んでいるところも多いでしょう。株式会社と言っても、夫婦で経営している個人会社から全国展開している大企業もあります。

どんな強みがあるのか運営主体を知ることはもちろん大切ですが、他にも勤め先となる自治体による違いなどにも目を向けながら、就職・転職先を選択していくようにしましょう。