子育て支援員の資格と取得するメリット
待機児童問題や保育士の慢性的な人材不足がメディアに取り上げられ注目されると同時に、育児経験を活かして保育士資格を取得する人が増えつつありますが、もう一つ、子育て支援員の資格を取得し保育現場で活躍する人も増えつつあります。
「育児経験を活かして保育現場で社会復帰したいが、活躍できるか不安もある」
「保育士資格よりも手軽に取得でき、尚且つ現場で活かせる資格が欲しい」
「保育現場の求人募集欄内の資格項目で『子育て支援員』を目にしたことはあるが、どのような資格なのか具体的には知らない」
このように、「子育て支援員」について初見の人も既に知っている人も、これから求職活動を進めていく上で参考になるよう、保育士資格や無資格との業務内容のちがいや取得方法についてお伝えいたします。
子育て支援員は保育士に準ずる子育て支援の担い手
昨今の社会環境は、地域交流が希薄化し、家族背景が多様化・複雑化してきています。この流れを鑑み、子どもが健やかに成長できる環境や体制が確保されるよう、地域の実情やニーズに応じた人材を確保することが必要とされているのです。
そこで内閣府は、平成27年度にスタートした「子ども・子育て支援施設」のもと、地域において子育て支援の仕事に関心を持ち、子育て支援分野の各事業等に従事することを希望する者に対し、多様な子育て支援分野に関して必要となる知識や技術スキルを修得するための全国共通の子育て支援員研修制度を創設されました。
この研修制度によって子育て支援員の資質の確保を図り、子どもをとりまく社会環境が厳しくなってきている中でも子育て支援の新たな担い手となれるよう、保育業界からだけでなく、社会的にも大きな期待をよせられています。
活躍する場所として想定されているのは、小規模保育園、家庭的保育所、ファミリー・サポート・センター、幼稚園の一時預かり、放課後児童クラブ、地域子育て支援拠点など、実に多岐に渡っています。
この背景には、深刻な保育士の人材不足があります。
多様化する働き方改革が進むにつれ共働き世帯が増加し、保育園のニーズも年々高まっていますが、それに対して保育園や保育士の数が足りていません。
内閣府は、子育て支援員制度が創設されたのと同じ「子ども・子育て支援法」の中で、保育サービスを充実させることで子育て世帯のニーズに応えようと試みましたが、現状は、保育現場が保育士人材を集められないことによって、この制度の効果が十分に発揮できないことが問題となりました。
そこで、保育士資格を持っていない方でも就業しやすいようにと、この子育て支援員研修が創設されたのです。研修で資質の確保を図る反面、人材確保の緊急性が高いことから子育て支援員の取得に必要な研修の受講時間は、多くの人が取得しやすい時間数となっています。
研修受講時間は合計20~40時間
子育て支援員になるためには、国が定めた研修を受け、「子育て支援員研修修了証明書」を交付される必要があります。
この研修を受講できるに年齢や資格制限はなく、子育て支援の仕事に関心をもっている全ての人が対象となる研修です。
詳細は、各自治体に一任されているものの、ほとんどの自治体では無料で受講できます。研修内容は、基本研修と専門研修から成ります。
専門研修は、
- 地域保育コース
- 地域子育て支援コース
- 放課後児童コース
- 社会的養護コース
に分かれ、基本研修を修了した者だけが選択することが可能です。
自分自身で知識を深めたい分野を振り返りコースを選択できるので、より身の入った研修にすることができるでしょう。
さらに、全ての研修修了後も、保育事業に従事する概ね2年未満の子育て支援員に対して「フォローアップ研修」を、保育事業に従事する全ての子育て支援員を対象に「現任研修」を行うなど、継続して資質の向上を図れるような内容となっています。
無資格者と比較して学んだ知識やスキルが明白
◆業務内容
業務の中心は、保育補助です。
排泄補助や環境整備、園児の安全管理や保育活動や行事の準備など、保育士の指示のもと補助的役割を担います。朝や夕方以降の時間帯など、保育士が不足しがちな時間帯に勤務する場合は、送迎時の保護者対応を任されることも。業務内容においては、無資格者と比較しても大差はありませんが、現場で働く保育士からの信頼や期待は無資格者よりも大きいのは間違いないです。
特に小規模保育園のB型では、園の事情によっては資格を持つ保育士と担任を組むところもあり、より貴重な経験が得られやすいでしょう。
取得するメリットは大きく3つ
◆求職活動で有利
第一に、求職活動で有利になります。保育園の求人数は他業種と比較しても年間を通して多く、その求人の中には保育士のみならず子育て支援員の資格保持者を対象としたものも多いです。
当然、無資格者よりも就職先の選択肢が広がるので、より理想の働き方や待遇など希望条件に沿う求人に出会いやすくなると言えるでしょう。
また、採用担当者側から見た時に、子育て支援員の資格があることで実務経験はなくとも意欲向上心が高く、就職後も知識やスキル向上のために積極的な姿勢を見せてくれるだろうと期待されやすい点もメリットです。
保育の求職活動の際に、「未経験だが、子どもが好きで意欲向上心はある」ことは大前提。求職するほとんどの人がこれに当てはまるでしょう。しかしその中で、「意欲があるので、実際に子育て支援員の研修を修了した」と言えばどうでしょうか。意欲ややる気と言った見えない部分を適切に評価することは難しいですが、認定修了書が交付される子育て支援員の資格取得者は、目に見えるものとして残るため評価をしやすいのです。
◆待遇
2015年1月22日に行われた「子ども子育て会議」において、
「小規模保育B型で、子育て支援員の年収を180万円(補助は200万)で設定していたが、低すぎるという指摘を委員より受け、250万円(補助は300万)にアップした。」
という発表がありました。
フルタイムで働く子育て支援員の年収が180万円ではワーキングプアを量産するものだという指摘を受け、見直されたものです。保育士は460万円で補助金が加算されているので待遇差はありますが、非保育士であっても保育士と同じ保育従事者として質を担保するために、今後もさらなる待遇改善が期待されています。
◆取得の気軽さ
保育士の資格を取得する方法に、保育科がある大学や短大などの指定一般養成施設を卒業する方法と、年2回ある保育士試験を受験する方法があります。
保育士試験の場合、最初に1科目1時間ある筆記試験を2日間にわたって9科目分受験します。筆記試験に合格すれば実技試験にすすめますが、①音楽に関する技術②造形に関する技術③言葉に関する技術の3分野のうち2分野を選択し、そこでも総合得点の6割を得点しなければ資格を取得することは叶いません。
最終合格率は20%と難易度が高いとも言われており、この方法で資格取得するにはかなりの時間を費やす必要があるのです。
一方、子育て支援員は研修を修了することで取得できます。研修の受講資格に制限はなく、育児経験や職場経験など多様な経験を有し、地域において子育て支援の仕事に関心を持っている人ならば誰でも受講できるのがポイント。
多くの人に門戸が開かれているので、「保育現場に挑戦してみたい」といった人でも比較的気軽に取得できるのは大きなメリットです。
子育て支援員の資格取得は、保育士資格を目指す方にもぴったり
子育て支援員の資格取得を取得した後、実際に保育現場で技術スキルを向上させ、経験を積むことができます。ゆくゆくは保育士資格を取得したいと考えている人も、日頃から園業務に携わることで、保育士試験の合格率を高めることができるでしょう。
研修や現場で知識や技術スキルを習得しながら、保育士に向いているか向き合うこともできます。これから就職活動等でいろんな選択をしていく上で、選択肢の幅が広い方が物事を自分の思い通りにしやすいです。ぜひ、子育て支援員の資格取得を考えてみてはいかがでしょうか。