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CME保育士コラム

保育士さんも知っておきたい取り扱いに注意が必要な食材とは

2020年2月3日、島根県松江市の保育施設の節分行事による豆まきの豆で、4歳の園児が大豆を喉に詰まらせ窒息死しました。

 

ついこの間の2月2日、多くの保育園で豆まきをし、季節行事である節分を子どもたちに楽しんでもらおうと工夫を凝らしたところではないでしょうか。

当日までに、年齢に見合う文具の使用や手先の運動を取り入れた製作活動の中で、鬼のお面作りや豆を入れる箱を一人ひとりに作ってもらいながら、子どもたちが節分に興味をもてるよう取り組んできた保育士は多いと思います。絵本の読み聞かせの時間でも、節分とは何か、鬼や福とは何かが分かる絵本を用いたところもあるでしょう。

 

 

恐らく、事故が起きた担任保育士も行事前の「導入」のうちから工夫を凝らしていたと思います。そして当日を楽しみに過ごしてきた園児や子どもが製作したお面や箱を持ち帰るのを楽しみにしている保護者の姿があったと思います。このような事故で悲しい想いをすることがないよう、取り扱いに注意が必要な食材について改めて学んでいきましょう。

 

保育園の給食の特徴

まず、下の図を参照してください。

 

 

提供の対象が0~6歳児なので食種も幅広く、また保育時間が長いことから、もともと発達や発育が著しい保育園児たちの栄養素が不足しないように栄養管理が重要であるとされています。保育所保育指針にも示されているように、保育施設において食育は、特に重要な位置づけです。

④の食品除去の解除では、例えば、主要原因食物である鶏卵、牛乳、小麦は年齢を経るうちに食べられるようになる子どもが多く、3歳までに約5割、6歳までに約8~9割で解除がすすみます。このため子どもたちは6~12か月毎など定期的に医療機関を受診し、負荷試験を実施するなかで、解除が可能か確認してもらうこととなっています。

 

保育園では子どもたちの除去食生活の変化を逐次追って、園での対応も変化させていく必要があるのです。 そのうえ、提供回数が多く、その分食事中の事故が起こりやすい環境にあると言えます。

 

食事中の事故は大きく分けると3つ。

①嚥下が正常にできずに気道異物や窒息することもある「誤嚥事故」

②食物アレルギーを食べてしまうことによって起きる「誤食事故」

③誤った配膳によって起きる「誤配事故」

です。

 

硬い豆やナッツ類は誤嚥しやすい食品のひとつ

冒頭の事故報告を受けた消費者庁は、硬い豆やナッツ類を与えてはいけない年齢について、これまで3歳未満だった注意喚起の対象を今年から5歳未満へと拡大しました。

昨年まで3歳児以上のクラスでは炒り大豆を使用して豆まきしていた保育園も、今年からは全てのクラスで丸めた新聞紙に変更したというところが大半ではないでしょうか。

 

平成22年12月から平成29年12月末までに、消費者庁には、大豆やピーナッツなどを原因とする14歳以下の子どもの誤嚥事故が27件報告されています。豆やナッツ類の誤嚥は、事故報告件数は多くないものの、危害の程度が気道からの異物除去などの治療で入院を要する中等症・重症が全体の約6割を占める16件報告されており、重大事故につながりやすいのが誤嚥事故の特徴です。

 

報告件数が全体で27件あるうち、20件を3歳未満の事故が占めています。奥歯が生えそろわず、噛み砕く力や飲み込む力が十分ではなく、気道も狭い子どもが豆やナッツ類を食べると、気道に入って気管支炎や肺炎を起こしたり、窒息したりする恐れがあります。

大人に近い咀嚼ができるようになり、飲み込んだり吐き出したりする力が十分に発達するのはそれぞれ3歳頃ですが、その2つを協調させることができるようになるのは6歳頃と言われています。そのため、保育園においても、硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもに食べさせてはいけません。

 

 

保育施設での食事中の事故で最も多いのは誤嚥

誤嚥事故が起きやすい食材は、大豆やピーナッツ類などの硬い豆の他にミニトマトや枝豆、こんにゃくゼリー、チーズ片、ちくわ、氷、キャンディー類などさまざまです。事故年齢は乳幼児期全体にみられますが、特に多いのは0~1歳児。5歳になるまで大豆やピーナッツ類は与えない他、もちはたとえ小さく切っても2歳まではあげない、歩きながらや遊びながらものを食べさせないなど、食事中の環境を振り返り事故対策に努めましょう。

 

0歳児クラスでは、発達に応じて離乳食をすすめていきますね。

離乳食には初期・中期・後期があり、それぞれ提供する食事の「固さ」や「まろやかさ」、ミリ単位で定められている「食材の大きさ」が異なりますが、保育士は単に月齢だけで離乳食をすすめるのではなく、口唇の動きや嚥下にも着目する必要があります。また保護者と一緒に離乳食をすすめていくという姿勢で、保護者にも家庭での食事状況を聞き取りして進めていくことも大切です。必要に応じて、主任保育士や栄養士、調理師に食事中の様子を確認してもらうのも良いでしょう。

 

 

保育園での食物アレルギー対策とは

「保育所におけるアレルギー対応にかかわる調査研究」によると、誤食の事故が平成20年度1年間に29%の保育所で発生していたと公表されています。

また、「アレルギー疾患に関する調査研究報告書」によると、平成16年の小学生の食物アレルギー有病率が2.6%とされていますが、「保育所における食物アレルギーに関する全国調査(平成21年)」によると、保育所では4.9%と高率で、3歳以下では小学生の2倍、1歳では3倍以上という結果でした。ちなみに0 歳は7.7%となっていますが、0歳児の食物アレルギーは確定診断に至っていない場合もあるので、食物アレルギーをもつ園児は1歳児より多いと推定されています。

 

アレルギー疾患は専門性の高い分野であり、その上、考え方や治療が近年急速に発達し、 変化しています。 また、医療現場でもアレルギーの理解度に差があるため、医師によって診断や指導方法が異なり、保育の現場で混乱する原因ともなっています。特に、乳児期には診断が確定できていないことも多く、 除去食物の種類が増える傾向にあります。

 

保育園での食物アレルギーによる誤食事故の対策としては、初めての食材は必ず家庭で食べてきてもらうこと。給食で使用する食品は家庭で食べたことのあるものを基本とします。

食物アレルギーの原因となる可能性がある食品は、リストにして各家庭に配布し、園児が食べたことのある食品にチェックをつけて提出してもらいますが、入園時に提出してもらうだけでなく、その後も適宜保護者に確認していくようにしましょう。

 

はちみつや黒砂糖は乳児ボツリヌス症予防のため満1歳までは与えてはいけません。家庭内での事故ですが、2017年に生後5か月の男児がはちみつのボツリヌス菌によって亡くなった事故が起きています。死亡事故は、日本ではこの時が初めてでした。

保育園では当たり前のように認識していることでも、保護者にとっては慣れない育児の中で知らないことも多いです。保護者支援の一つとして、取り扱いに注意が必要な食材について正しい情報を保護者に助言するのも保育士の大切な役割です。連絡帳などの日常の保護者とのやり取りから家庭の状況をうかがいつつ、どの保護者にも分かりやすいようイラストなどを用いながら紙面にて注意喚起すると効果的でしょう。

 

 

検食の役割とは

保育施設もそうですが、大規模人数に食事を提供する施設では検食が定められており、検食者は以下のような様々な視点で給食の提供に問題ないか確認します。

 

・異物混入の確認

・加熱や冷却処理の適切な実態

・異味・異臭など異常の確認

・一食分の量の適切性

・味付けや香り、色彩、形体の確認

・旬の食材や献立となっているか

・食材の大きさや切り方は適切か  など

 

検食者は、誤嚥誤食事故を未然に防ぐための大切な役割を担っています。

誤嚥誤食に問題がないかを確認出来た後は、保育士が誤配に気を付けなければなりません。誤って食物アレルギーをもつ園児にアレルギー食品が含まれる食事を提供しないように、専用のトレーにのせて配膳したり担任保育士以外は配膳しないようにしたり、配膳を工夫する必要があります。

 

食事中の事故を未然に防ぐために、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」や「保育所等における食物アレルギー対応マニュアル」を活用しながら、保育園独自のマニュアルを用意しているところも多いのではないでしょうか。

万が一、食事中の事故が起こった時の対応もマニュアルに載っているはずなので、今一度確認しながら日々の保育を振り返るきっかけにしましょう。