保育士の求人・転職のことならCMEコンサルティングへ/保育士の求人・転職なら【CME保育士】

CME保育士コラム

知っていて損はない!宿舎借り上げ支援事業について

保育士の就業継続を図った支援事業の一つに、『保育士宿舎借り上げ支援事業』があることをご存知でしょうか。

待機児童問題が社会問題として多くの人に注目されるようになり、政府が問題解決に向けて事業を活用できる対象者を拡充し、今日ではほとんどの自治体で導入されています。

2013年の運用開始当初はあまり知られていませんでしたが、近年は転職活動で活用する方が増え、最近では広く認知されるようになりました。

 

「生活水準が下がらないなら、都市部の保育園で働いてみたい」

「転職時期に合わせて生活費を見直したい」

「他園への転職に伴い引っ越しの予定があるが、宿舎借り上げ支援事業の対象だろうか」

など、既に具体的に転職を考えている方は、本記事で、事業内容と今後の事業運用の見通しを一緒に確認していきましょう。

 

 

まだまだ転職について具体的に検討していない方でも、用件を満たしていたら活用できます。また、宿舎借り上げ支援事業が導入された経緯や制度運用の変遷を知っておくと、その背景にある待機児童問題や保育士の離職率問題、その他保育士を取り巻く制度の変遷がみえてくると思います。

つい先月行われた厚生労働関係部局長の会議では、令和3年度から対象者を見直すことが確認されました。待機児童数など、保育士を取り巻く環境の変化に応じて、事業運用が少しずつ変わりつつあります。

そのうえ、自治体間でも事業の運用に差があります。本記事では、東京都・大阪府・神奈川県を取り上げてご紹介しますので、それぞれのちがいにも着目して見ていきましょう。

 

 

保育士宿舎借り上げ支援事業とは

保育士宿舎借り上げ支援事業とは、名前のとおり、事業者が雇用する保育士の宿舎を借り上げた際の費用の全額または一部を補助する事業です。保育園や運営主体である法人等が「所有する」物件に居住するのではなく、「借り上げている」物件に居住します。

開門や閉門時間などの集団生活上のルールがある寮とは異なり、他の職員の生活を気にしなくて済むのでその分気楽な生活を送ることが可能です。保育園によっては、保育園の運営事業者名で契約することが可能な物件であるなら、自分自身で間取りや交通アクセスの良さから気に入る物件を選ぶこともできます。

ただし、勤務先となる保育園と同一自治体内であることや通勤時間1時間圏内に住むこと、といった居住場所の要件は各自治体によって異なるので、その点に気を付けてチェックするようにしましょう。

 

 

補助金額は、最大上限82,000円です。家賃や管理費、共益費は補助金の対象ですが、敷金や礼金等は含まれません。入居にかかる費用は、あらかじめ自分で準備しておく必要があります。また、補助が適用されるのは勤務開始月です。例えば、4月から働き始めるために3月に引っ越して入居したとしても、3月時点では未就労のため、家賃は自己負担です。

 

なお、補助金額の上限は、自治体の実勢に合わせた金額が設定されています。

【東京】

23区を中心に大半の自治体で最大上限額である82,000円が適用されています。

勤務先と同一区内物件を借り上げた場合に、区独自の加算を行っているところも。

・千代田区:130,000円

・港  区:112,000円

・渋 谷 区:100,000円 など

【大阪】

大阪市の例です。

①66,000円(平成28年8月以降に採用された保育士)

②49,000円(上記のうち、現在勤務する保育所等に採用されるまでの1年未満に市内の保育所等での勤務経験がある保育士。また、市内民間保育所等の採用から起算して10年以内の保育士で上記に該当しない保育士)

ただし、令和元年度から事業を利用していて、令和2年度も引き続き同じ宿舎に入居している場合は、①の方は補助上限月額82,000円、②③の方は補助上限月額61,000円になります。

【神奈川】

横浜市や川崎市は82,000円

 

この事業を利用できる保育士は、採用された日から起算して10年以内(2021年度からは、採用9年以内に変更)の常勤の保育士です。1日6時間以上、月平均の勤務日数が20日以上あるなら、パート保育士でも事業利用の対象となります。産休・育休などによって休職していても、保育園運営事業者が継続して宿舎を借り上げて費用負担を続ける場合も対象です。

 

転勤制度がある会社など、通常は会社の福利厚生の一環として補助されるものですが、保育士は国の制度として利用できます(他には、介護職従事者も国による制度がある)。

なぜ保育士は国の制度で行われているのか、事業が始まった経緯をみていきましょう。

 

 

保育士宿舎借り上げ支援事業の背景に

冒頭のとおり、宿舎借り上げ支援事業は2013年に運用開始した事業です。最初は、2013年から2017年度までの5年間で50万人分の保育の受け皿を整備するという『待機児童解消加速化プラン』に位置付けられていました。目的は、保育士の就業の継続及び離職の防止を図るためです。

その後、2017年の『子ども・子育て支援新制度』により多様なニーズに応えるために保育整備が進んでいく過程で、保育園を利用したい国民のニーズがより一層深掘りされ、2018年度から始まった『子育て安心プラン』で待機児童数ゼロを目指した様々な事業が行われることとなりました。

2017年は、宿舎借り上げ支援事業の対象者が、採用から5年以内の者→採用から10年以内の者へと変更された年です。保育業界が大きく変わったこの年は、保育士不足によって休園や予定通りの開園ができないことが問題となり、2018年度以降、この事業を利用する保育園運営事業者が増加しています。

 

 

『子育て安心プランは』今年度末で終わり、来年度からは『新子育て安心プラン』が始まります。待機児童数は、2019年4月時点で16,772人と着実に減少していますが、政府は、

令和7年の女性(25~44歳)の就業率80%を目標(2019年時点:77.7%)に、就業率上昇と保育の受け皿を拡充させる方針です。

それに伴い、宿舎借り上げ支援事業も、毎年のように事業対象となる保育士の要件が見直されています。

 

2020年度は、採用された日から起算して10年以内の常勤の保育士を基本としつつも、直近2年の4月1日時点の待機児童数が連続して50人未満、かつ、直近2か年の1月の保育士の有効 求人倍率が連続して全国平均以下の自治体では、採用から5年以内とするという、待機児童数と保育士の有効求人倍率の要件によって採用5年か10年以内の保育士に分けていましたが、2021年度からは、有効求人倍率や待機児童数の要件を撤廃し、事業の対象となる者とならない者との公平性を鑑みて、対象期間の段階的な見直しを図ることとなりました。

具体的には、「採用された日から起算して9年以内の常勤の保育士」ですが、この要件は、2022年以降も随時見直される可能性が十分にあります。

 

 

宿舎借り上げ支援事業がなくなる可能性

繰り返しになりますが、待機児童数の増減による保育の受け皿整備のための制度と保育士確保のための事業内容の変化は伴っています。

来年度から新プランが始まりますが、今月2日、この新プランにかかる財政費用捻出のため、世帯主の年収が1,200万円以上の場合は、2022年10月分から児童手当を支給しないとする改正案が閣議決定されました。児童手当廃止によって得られる財源、年間およそ370億円で待機児童問題の解消は加速化するでしょう。

 

 

既にこの事業を活用している保育士からは、通勤時間が無くなり自分の余暇時間が増えたと喜ぶ声や、また、管理者側からは、コロナや災害級の台風や大雨被害の中でも開園しなければならない保育園にとって、職員の安全配慮の面から見てもありがたい事業であるという声があがっています。

保育士の人材確保や財政支援の他にも活用するメリットはあると言えますが、活用したい方は事業が縮小されるより早く活用するべきなのかもしれません。保育士として長く働き続けるために、宿舎借り上げ支援事業を活用する意義は大いにあるのではないでしょうか。