幼保英語検定とは?活躍の場は?
「幼児教育・保育英語検定(通称、幼保英語検定)」は、幼児教育や保育環境の国際的なグローバル化に対応できる幼稚園教諭・保育士を養成することを目的として、一般社団法人 幼児教育・保育英語検定協会によって創設された試験です。2010年から始まった「保育英検」が刷新するかたちで2019年に創設されてから現在まで約2年、現時点ではまだ認知度は高くないですが、グローバル化が進んでいく今日において、今後ますます需要が高まっていくと考えられています。
実際に、この資格を所持していると5千円~1万円程度の資格手当がつく求人も増えてきており、既に保育業界で注目度が高まりつつあると言えるでしょう。
今回は、そんな「幼保英語検定」に着目し、検定の概要を理解するとともに活躍の見通しについて一緒に考えを深めていきたいと思います。
未就学児への教育・保育に関わる国内初の英語資格
英語検定と言うと、日本英語検定協会が主催している「実用英語技能検定」を思い浮かべる方が多いでしょう。学校を通して試験が案内され、実際に受験したことがある方も多いのではないでしょうか。
リスニングがあり、上級の試験になると二次試験がある点や、マーク方式選択問題で回答する点など、幼保英語検定との共通点が多いので、「実用英語技能検定を取得していたら、幼保英語検定と同様に保育現場でも活かせるのではないか」と考える方がいるかもしれません。しかし、試験の内容は全くの別物。幼保英語検定は、小学校入学前の乳幼児との会話、園内の教育・保育に焦点をあて、現場に即した実用英語を習得できることが大きな特色です。
例えば、「美味しい」を英語に直訳すると「delicious(デリシャス)」が使われることが多いですが、幼保英語検定では「yummy(ヤミー)」が使用されているなど、幼児がよく使うカジュアルな表現が用いられています。
単に知識を習得するだけでなく、習得した知識を実務で活かせるように、幼児との日常会話力を重視した試験だからです。この点が、一般的な英語検定とのちがいです。
試験の概要
では、ここで試験の概要を見ていきましょう。
試験は毎年、春季(7月実施)・秋季(11月実施)・初春(2月実施)の3回実施されています。いずれも第3日曜日です。試験会場は、全国11会場(札幌・仙台・さいたま・千葉・東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・岡山・福岡)と限定されていますが、2020年からは新型コロナウイルスの影響でオンラインでも受検できるようになりました。
1級と準1級の二次試験は、直近2回まで受検が可能です(二次試験のみの受検料は3,000円)。3回連続して二次試験に不合格だった場合は、再度一次試験から受けなければなりません。
試験の合格ラインは、正答率65%を基本として試験問題の難易度により上下するようですが、筆記とリスニングで8割の正答を目指すといいでしょう。合格した後、有料ですが、検定協会へ申請すると幼保英語士資格証という顔写真付きの資格カードが発行されます。
英語が苦手でも習得できるような試験構成
英語が苦手な方でも取り組みやすいよう、ファーストステップとしての4級から海外でも活躍できる1級まで5段階で構成されており、英語習得が苦痛なものではなく楽しみながら知識を深められる工夫がなされています。また、試験同日に同じ会場で実施する級の中で、開始時間が異なる級のダブル受験も認められている(申し込みはそれぞれの級で必要)ので、現時点の英語習得レベルの確認をしながらも次のレベルへ挑戦しやすい試験構成となっています。
いきなり難易度の高いものだと何から勉強していいか分からず、資格取得にまで至らない場合もありますが、幼保英語検定の場合は多忙な保育業務の合間でも挑戦しやすいと言えるかもしれません。
それでは、それぞれの級の特徴を見ていきましょう。
『幼保英語へのファーストステップ』4級
- 難易度
中学初級~中級程度
- 出題目安
・幼保英語習得へのきっかけとして、初歩的な単語・フレーズが理解でき、知識を有する。
・簡単な定型的なフレーズを用いて簡単なコミュニケーションがとれる。
- 出題場面
登園、出席、室内遊び、トイレ、屋外遊び、お昼ごはん、お昼寝、お迎え
『英語を使う園でのチャレンジ』3級
- 難易度
中学卒業程度
- 出題目安
・幼保英語の基礎的な文法を理解し、定型的なフレーズを用いた表現でコミュニケーションがとれ、簡単な会話が聞き取れる。
- 出題場面
登園、出席、室内遊び、トイレ、屋外遊び、お昼ごはん、お昼寝、お迎え
『海外インターナショナルスクールでのチャレンジ』2級
- 難易度
高校中級~卒業程度
- 出題目安
・幼保英語に必要な文法知識を有し、コミュニケーションがとれ、簡単な文章作成ができる。
・英語による幼児教育現場において、補助的役割を果たすことができる。
- 出題場面
・入園の相談(電話対応・道順・伝言メモ・必要書類記入・説明会)
・入園と登園(自己紹介・提出書類・持ち物チェック・カレンダー・悪天候時の登園・緊急事態時の対応)
・室内遊び(工作・お絵描き・連絡帳・ストーリーテリング・ダンス)
・朝食とおやつ(献立・片付け・歯磨き・アレルギー時の対応・お行儀)
・屋外遊びと遠足(遊びのルール・遊具・遠足の準備・許可書)、病気とケガ(体調不良時の対応・健康管理)
『アシスタントティーチャーへの指示、ヘッドティーチャーへ』準1級
- 難易度
大学中級程度
- 出題目安
・幼保英語を使った円滑なコミュニケーションと幼児教育現場の活動における文章作成ができる。
・幼児教育現場においての補助的レベル保持者への支持ができる。
・非英語圏の幼児教育現場での活躍ができる。
- 出題場面
・登園(園バス・悪天候時の登園)
・園行事(季節の行事・プール・運動会・発表会・餅つき大会・節分・ひな祭り)
・赤ちゃんの成長と乳児保育(発表・離乳食・保育条件書・母子手帳)
・病気と休園(虫歯・予防教室・報告書・インフルエンザ・出席停止・園たより・臨時休園・連絡網)
・緊急時対応の訓練(引き取り訓練・避難訓練・非常時持ち出しキット)
・アフタースクール
『幼保英語のエキスパートへ』1級
- 難易度
大学上級程度
- 出題目安
・幼保英語を使って支障なく幼児教育現場で活動が行える。
・高度なコミュニケーション能力と文章作成力を有し、海外での幼児教育現場を含めて活躍ができる。
- 出題場面
準1級の出題場面と同様、幼児教育・保育現場においてのあらゆる場面や状況が出てきます。2020年は新型コロナウイルスが想像以上に世界中で猛威をふるった年になりましたが、そんな想定外の事態にも対応できる幼児英語のエキスパートを養成するべく、どんな場面や状況が出題されるのか実際のところは未知数のようです。
保育現場でも英語力がある保育士の需要は高まりつつある
保育所保育指針内の『保育の実施に関して留意すべき事項』では、“保育士等はそれぞれの文化の多様性を尊重し、 多文化共生の保育を進めていくことが求められる”と記載されており、その具体例として、“例えば、外国籍の保護者に自国の文化に関する話をしてもらったり、 遊びや料理を紹介してもらったりするなど、保育において子どもや保護者が異なる文化に触れる機会をつくるといったことが考えられる”と示されています。
それを裏付けるように、ベネッセ教育総合研究所が2018年に全国の保育園・幼稚園・認定こども園を対象に行った『第3回幼児教育・保育についての基本調査』の中で、英語活動の実施率の高さが明らかにされました。
- 英語活動の年齢別実施率
・3歳児:55.4%
・4歳児:82.2%
・5歳児:95.0%
この数値は、「ひらがなの読み書き」に次いで「体操」と同様に高いものでした。英語活動の実施率の高さの背景には、英語活動を通して他文化に触れながら、「多様性を認めて互いに尊重する心を育てましょう」という指針が基盤にあると言えるでしょう。
一方、活動の指導者を「園の保育者」と答えたところは15.1%のみと、圧倒的に少ない現状も明らかにされました。9割近くが外部講師によって、活動を指導しています。英語活動を外部講師に頼っている保育園が多い今、活動を指導できる保育士のニーズは高まっています。転職やスキルアップ手段の一つとして、幼保英語検定の取得を考えてみてもいいかもしれません。