地域限定保育士とは
保育士と言われると、「資格を取れば全国どこの保育園や乳児院などでも働ける」というイメージの一方で、合格率が低くて難しい資格と思う方も多いと思います。
今回はそんな保育士のイメージとは少し違った、地域限定保育士について、詳しく紹介していきます。
地域限定保育士とは
地域限定保育士(国家戦略特別区域限定保育士)試験を受験して、合格した人に与えられる資格が地域限定保育士です。
保育士不足を解消するために一部の地域で取り入れられた制度で、通常の保育士試験と併せて、地域限定保育士の試験を開催することにより試験回数が増え、保育士の人数を増やしていこうというねらいがあります。
受験した地域のみで保育士として働くことができるもので、受験した場所と違う地区では、「保育士」として働くことができません。
しかし、3年を経過すれば、4年目からは通常の保育士同様、全国の保育園で保育士として働くことができます。
つまり、通常の保育士と地域限定保育士の大きな違いは、資格取得後から全国どこの保育園でも働くことができるか、3年間は特定の地域でしか働くことができないかというところです。
地域限定保育士と言っても、特定の地域内では通常の保育士と同じように働くことになるため、業務内容や給与に差はありません。
地域限定保育士のメリット・デメリット
地域限定保育士ならではのメリットやデメリットについて紹介していきます。
地域限定保育士のメリット
実技試験のない地域が多い
通常の保育資格では、実技試験も必須ですが、地域限定保育士では、実技試験を行っていない地域も多くあります。
実技試験は緊張感もあり、思うように実力を発揮できないという方も多いので、実技試験免除は嬉しいですよね。
基本的には働きながら覚えていけば良いという理由から実技試験がない場合が多いですが、中には実習に行く地域や、実技講習と言って、講習を受けるだけでOKという地域もあります。
例えば神奈川県の場合、筆記試験の合格者を対象に、実技講習が行われます。
期間は1か月設けられており、その中で5日間程度講習に参加することで、実技試験を免除することができるようになっています。
合格率が上がる
地域限定保育士試験、通常の保育士試験はそれぞれ年に2回開催されています。
保育士には、科目合格制度といって、合格した科目は、合格した年を含めて3年間はその科目に合格しているということを認めてもらうことができます。
地域限定保育士として合格した科目は、通常の保育士試験でも免除が可能なので、通常の保育士試験と、地域限定保育士試験を合わせて、3年間で12回(地域限定保育士試験=2回×3年、保育士試験2回×3年)も、受験のチャンスがあります。
普通保育士のみでは6回しか受験できないものが、倍の12回になり、合格できなかった科目に重点を絞って勉強すればいいので、合格率としてはどんどん高くなります。
~合格例~
1回目の受験(通常の保育士試験)で4科目合格
2回目の受験(地域限定保育士試験)で3科目合格
3回目の受験(通常の保育士試験)で1科目+実技試験合格
この場合は通常の保育士資格が授与されます。
1回目の受験(通常の保育士試験)で2科目合格
2回目の受験(地域限定保育士試験)で3科目合格
3回目の受験(通常の保育士試験)で1科目合格
4回目の受験(地域限定保育士試験)で2科目合格+実技講習を受講
この場合は地域限定保育士資格が授与されます。
地域限定保育士のデメリット
3年間は特定の地域でしか働くことができない
住んでいる地域に限らず、地域限定保育士を採用しているところであればどこでも受験が可能ですが、3年間は特定の地域でしか保育士として働くことが出来ません。
そのため、引っ越す可能性がある場合などは、注意が必要です。
自分がどのような働き方を考えているのか、どの地域でなら3年間働くことができるのか等を、受験前にしっかり考えておく必要があります。
受講費が普通の保育士試験と同じ
出願するごとにお金がかかりますが、その費用は通常の保育士試験と同じ金額がかかります。
そのため、先ほど説明した通り、受験できる回数は多いですが、その分お金がかかるとう点に注意が必要です。
実施する地域が決まっておらず、実施の発表も遅いことが多い
この地域は毎年地域限定保育士採用試験を実施するということが事前にわかっていればいいのですが、同じ地域でも実施する年・そうでない年があり、希望の場所で地域限定保育士として働けるかどうかがわかりません。
また、実施するとしても実施日のスケジュール等の発表がギリギリのことも多く、スケジュール管理が難しいということがデメリットに挙げられます。
待機児童解消のための取り組みであることから、待機児童の多い地域では、比較的開催されることが多い傾向にあります。
地域限定保育士試験の内容
先ほど試験回数が多いと説明しましたが、実際にどのような試験内容になっているのかについて、詳しく紹介していきます。
受験資格
- 一般の大学・短期大学・専門学校等を卒業している
- 高等学校・中等教育学校等を卒業し、かつ児童福祉施設で2年以上&2,880時間以上勤務している
- 義務教育を修了し、かつ児童福祉施設で5年以上&7,200時間以上勤務している
というように、受験資格は通常の保育士資格を取るための受験資格と同じです。
住民票のある場所に関わらず、全国どこの地域限定保育士試験でも受験することができ、例えば、大阪府に住んでいても、神奈川県の地域限定保育士試験を受けることが可能です。
ただし、3年間はその地域でしか働くことが出来ないため、地域選びはよく考えて受験することが大切です。
実施場所・日程
毎年実施場所や日程は異なりますが、年に2回開催され、普通の保育士試験と同日開催の年や、少しずらした年など様々です。
実施場所は決まっておりませんが、神奈川・大阪で開催されることが多いです。
2021年は神奈川での開催が発表されています。
地域限定保育士試験の難易度
科目内容は
- 保育原理
- 児童家庭福祉
- 教育原理及び社会的養護
- 社会福祉
- 子どもの保健
- 保育の心理学
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
の8科目で、試験自体は通常の保育士試験と同じです。
そのため、難易度も同じく、合格率は全体の2割程度となっています。
先ほども紹介したように、実技講習や実習などに参加することで実技試験を免除することができる地域もあるため、読み聞かせやピアノが苦手という方は、地域限定保育士の試験の方が合格を目指しやすい場合があります。
地域限定保育士になりたいという方は勿論、通常の保育士として働きたい方も、地域限定保育士試験で合格した科目を、通常の保育士試験では免除することができるため、うまく活用することで、保育士になれる可能性が高くなります。
普通の保育士資格だけでなく、地域限定保育士という選択肢もあるということを覚えておくと便利です。