アレルギーは食べ物だけ注意しておけばいい!?
保育園でのアレルギー対応の多くは卵や乳・小麦など食べ物に関するものが多く、給食をアレルギー除去食にして対応することが多いかと思います。
しかし、実際には「アレルギー」と言っても食べ物ではないアレルギーも多くあります。
有名なもので言えば、花粉・ペット(犬や猫など)・ハウスダストなどが挙げられます。
しかし、中にはあまり知られていないけれど日常の保育に潜むアレルギーもたくさんあります。
そこで今回は日常保育で注意すべきアレルギーについて詳しく紹介していきます。
アレルギーとは
アレルギーは、あるものに対して過敏に免疫反応を起こす状態のことです。
免疫とは体を守るための防御システムで、元々持っている自然免疫と、予防接種のように、何らかの刺激を受けて新たにできる獲得免疫の2種類があります。
アレルギーの多くは、獲得免疫の中のIgEという抗体に関係のある反応です。
IgEは、ウイルスや細菌に対する抗体と違って、自然界によくある物質(花粉やダニ、食物タンパクなど)に対して出来てしまうため、体内に増えることで物質(アレルゲン)に対して過剰反応を起こしてしまいます。
アレルギー体質とは、IgEを作りやすい体質で、遺伝的に決定される場合が多いです。
アレルギー体質=必ずアレルギーを起こすというものではなく、元々のアレルギー体質に様々な環境の悪化因子などが作用して、病気が発症・悪化します。
体質を変えることは難しいですが、何が悪化因子かを知り、環境を整えることでアレルギーの発症を予防したり、症状を軽くすることが可能です。
何がアレルゲンになるのか、また、どういった反応がおこるのかは個人によって異なり、同じアレルゲンであっても、年齢や環境によって左右されます。
日常保育で気を付けるべきアレルギー5選
日々の保育の中で気を付けるべきアレルギーを5つ、詳しく紹介していきます。
1.乳・小麦アレルギー
給食ではアレルギー除去食などの対応をしていると思いますが、乳・小麦アレルギーは活動の中でも注意が必要なアレルギーです。
食物アレルギーは口に入れるだけでなく、触っただけで反応がでる場合があります。
例えば牛乳パックやペットボトルを使った製作を控える、乳児でよく使われる小麦粉粘土は米粉にするなどの配慮が必要です。
また、時々手作り玩具でパスタを入れたマラカスなどもありますが、万が一開いてしまった時のためにお米やビーズに変えることも大切です。
乳・小麦は多くのものに含まれているため、食べ物を使った感触遊びをする際にはしっかりアレルゲンを確認することが重要になります。
2.日光アレルギー
正式名称は光線過敏症で、日光にさらされた部分に蕁麻疹や発赤・炎症が起こるアレルギーです。
保育園では戸外遊びや散歩をする機会も多いですが、日光アレルギーがある子どもがいる場合、戸外遊びをする際には日焼け止めの塗布やUVカット効果の高い洋服の着用などが必要になります。
ただし日差しの強い夏の場合は薄手といっても長袖を着用していることから熱中症のリスクも高くなるため、こまめに水分をとったり日陰で休むといった配慮が大切になってきます。
3.酒(アルコール)アレルギー
コロナウイルスの流行をきっかけに、アルコール消毒が日常生活の中で多く行われるようになりました。
ただ、消毒液にはアルコールが含まれており、アレルギーがある場合、赤く腫れる、ただれる、蕁麻疹がでるといった症状がでることがあります。
また、重度の場合は噴霧された消毒液が口に入ることでアナフィラキシーショックを起こしてしまう場合もあるほど注意が必要です。
アレルギーのある子は手洗いを1番に済ませて保育士が傍につく(噴霧吸引防止)、アルコール消毒の代わりに次亜塩素酸を利用するなどの配慮が必要です。
次亜塩素酸にはアルコールが含まれていないため、机や玩具の消毒も次亜塩素酸のような、ノンアルコールのもので行う必要があります。
アルコール消毒が広まった今だからこそ気を付けたいアレルギーの1つです。
4.金属アレルギー
大人に多いイメージのあるアレルギーですが、子どもで発症するケースも増えています。
金属アレルギーがある場合、ミニカーなどの玩具や、鉄棒、ブランコの持ち手、スプーンやフォークといった金属製のものは勿論ですが、砂場遊びにも注意が必要です。
砂には微量の金属が含まれていて、手や足に赤みやかゆみ、腫れが出る場合があります。
金属アレルギーは遅延型といって、金属に触れたあと2時間~2日後と遅れて症状が出ることが多いです。
金属に触れただけでアレルギー反応が起こるわけでなく、汗などで触れた金属が溶けだしてしまうこととでアレルギー反応が起こります。
そのため、ブランコや鉄棒のようなしっかり握るものには極力触れない、手袋を着用する、汗をこまめに拭くといった配慮が必要です。
また、虫歯になって銀歯になると金属アレルギーが発症・悪化する恐れがあるため、日々の保育の中で正しい歯磨きの方法についての指導を行うことも大切です。
5.小児喘息
アレルギーというと「特定の物質に対して」と考えがちですが、喘息やアトピー性皮膚炎などもアレルギーに含まれます。
喘息は苦しそうな(「ゼーゼー」「ヒューヒュー」というような呼吸音がする)呼吸や咳が症状として挙げられます。
花粉やハウスダストといった、日常生活の中にある物質がアレルゲンとなって喘息を起こすことが多く、アレルゲンが判明している場合はできるだけアレルゲンを除去することで喘息発作を抑えることができます。
ハウスダストやダニであれば室内を清潔に保ったり、ぬいぐるみなどはこまめに洗濯する、花粉であればマスクやゴーグルの着用、できるだけ戸外を避けるなどの対応が必要です。
中には発作時に吸入薬を服用する子どももいます。
その場合には、いざという時のために保護者と吸入器の使い方についてしっかり確認をしておき、どの保育士であっても正しく吸入器を使えるように周知しておくことが大切です。
アレルギーといえば食物アレルギーのイメージが強く、給食やおやつの時のみの対応がメインと思いがちですが、食物アレルギーでも牛乳パックやペットボトルまで注意をする必要があったり、食物以外のアレルギーも多くあるため、様々な配慮が必要になります。
クラスの子だけでなく、園内で誰が何のアレルギーがあり、どの程度の症状で、アレルギー症状はどのようなものなのかについて全保育士が把握しておくことが大切です。
乳アレルギーといっても、洗った牛乳パックを製作などで使う分にはOKの子もいれば、それでもアレルギー反応が出てしまう子もいて個人差があります。
アレルギーがあることを伝えられた際には、保護者と細かいところまでしっかりと話をすることで、園でのアレルギー症状の発症リスクを抑えることに繋がります。