ADHDってなに?特徴や接し方などについて正しく理解しよう
日々保育を行う中で、園やクラスに「気になる子」がいることがあるかと思います。
原因が単純にその子の性格であることもあれば、家庭環境や発達障害が原因のこともあります。
また、発達障害と言っても自閉スペクトラム症や学習障害、アスペルガー症候群など、様々なものがあります。
その中でも今回はADHDについて紹介していきます。
ADHDの特徴や接し方について正しく理解することで、子ども自身が無理なく園生活を送れるようになり、気になる行動や言動が減っていく効果が期待できます。
ADHDとは
ADHDは注意欠如・多動症のことで、「不注意」と「多動・衝動性」が主な特徴となる発達障害のひとつです。
ADHDをもつ子どもは、家庭や保育園・学校生活などで様々な困難を抱えているため、環境や行動への介入や薬物療法を試みられています。
ADHDの治療は、人格形成の途上にある子どもの心の発達支援を行う上でとても重要なものです。
割合として女児よりも男児の方が3~5倍ほど多い傾向にあります。
ADHDの子どもによく見られる傾向としては
- 落ち着きがない
- 気が散りやすい
- 集中力が続かない
- 指示の通りに行動することが出来ない
- ルールを守ることが難しい
などが挙げられます。
ADHDの子どもは睡眠障害が起こる可能性が高く、夜泣きが酷い・寝つきが悪い・しっかりとした睡眠をとることが出来ない・眠りすぎるといった症状が出る場合があります。
質のいい睡眠がとれないことで、子どもが怒りやすくなるといった症状も出やすくなるため、睡眠障害が起きている場合には、しっかりとした睡眠がとれるように睡眠障害の治療行っていくことが大切です。
ADHDの特徴
上記で説明したように、注意欠如・多動症が主な症状になります。
そのためADHDをもつ子どもには、
- 製作など座って行う作業が苦手で、立ち歩いてしまう
- 活動中に他の遊びや玩具が気になってそちらに移ってしまう
- 待つことが苦手で、玩具の貸し借りや順番待ちなどでトラブルになることが多い
- 「静かにしましょう」と言われていることは理解できてもお喋りをやめることが出来ない
- 座っている時間も手足を動かしてじっと座っていることが難しい
といった特徴がみられることが多いです。
保育園という集団生活の場合、トイレや遊びなど、生活の中でたくさん「順番を守る」場面が出てきます。
しかしADHDをもつ子どもは自分がやりたいと思うと順番を待つことが難しく、割り込んだり玩具を奪ったりしてお友達とトラブルが起きることが多いです。
また、理解力は他の子と同様にありますが、自分がやりたいという衝動を抑えることが難しいため、静かにしなければいけない場面でも話したいことがあればお喋りを続けたり、保育士を見るように促しても、他に気になることがあればそちらを見てしまったりと、結果的に話を聞いていないように感じることが多く、保育士が「気になる子」と感じることが増えていきます。
ADHDの子どもへの接し方
ADHDの子どもは、自身で「困難」を感じていることも多いです。
先ほども紹介したように、他の子同様に「順番を待たないといけない」「今はお喋りをしてはいけない」など、わかってはいても、自分でそれを制御したり実行したりすることが難しいため、「わかっているのにできない」というもどかしさや、それを注意された事への悔しさや悲しさを感じている場合もあります。
また、お友達とトラブルになったことで友達との関係が上手くいかなくなったり、なぜあんなことをしてしまったのかと後悔することもあります。
そういった事から、保育園などの集団生活は「生活が難しい」と感じてるADHDの子が多いです。
では実際にどのようにADHDの子どもへ接していけば、子ども自身も無理なく園生活を送ることができるようになっていくのかについて紹介していきます。
1.写真やイラストを使って可視化する
言葉による指示は耳に入っていないことも多いため、写真やイラスト、ホワイトボードなどを活用して、流れを可視化することで子どもが理解しやすくなります。
例えば、「トイレに行ったら手洗いをして給食準備をして椅子に座る」という指示の場合、言葉で伝えても集中力が持続せず、トイレでお友達と話しこんだり水道で水遊びをしたりしてその後の流れを忘れてしまうことも多いです。
イラストをホワイトボードに貼り付けて矢印でつなげることで、子どもが流れを忘れてしまった時にホワイトボードを見れば、次にすべきことが一目瞭然なので子どもの困難を軽減してあげる効果が期待できます。
2.注意をするときは具体的に伝える
「ダメでしょ」というような注意の仕方は具体的な指示がないため、ADHDの子どもには伝わりづらい傾向にあります。
そのため、「今は座っている時間だから座っていてね」「お喋りは先生のお話が終わってからにしてね」というように、具体的に注意をすることで、子どもが理解しやすくなります。
長時間じっとしていることは難しいため、誕生日会のような行事の際には「時計が2になるまでは座っていてね」というように、具体的な時間を伝えてあげることも必要です。
3.声をかけるときは傍に行って目を見て話す
集団生活のため、つい遠くから「○○さん座って」などと指示を出してしまいがちですが、ADHDの子の場合はしっかりと子どもの傍へ行って目を見て落ち着いたトーンで話をすることが大切です。
また、興奮状態になっている時には無理に話をしようとせずにまずは子どもが落ち着くように援助してから話をしたりする配慮も必要です。
4.たくさん褒めてあげる
ADHDの子供はお友達とトラブルになりやすく、その分保育士やお友達に注意される機会が多いです。
集団生活に慣れていくためにも注意をすることは勿論大切ですが、注意されるたびに子どもは少なからず傷ついていて、自信を失ってしまう事にもなりかねません。
そのため、些細な事でも出来たときにはしっかりと褒めてあげることが大切です。
「お約束守れて偉かったね」「上手に出来たね」など、出来たことに対してはしっかりと褒めてあげることで、子どもの自信につながります。
特にADHDの子どもが苦手な、待つ・聞く・座るなどが出来たときには大いに褒めてあげることで、少しずつ集団生活へ入っていくことに慣れていくことが出来ます。
保護者との関わり方
ADHDの子どもを持つ保護者は、子どもがスーパーで走り回ってしまい「親の育て方が悪い」と言われる等、日常生活の中でADHDへの理解がない人から悪気なく傷つけられていることがあります。
そのため、保護者との関わり方はとても重要です。
「落ち着きがない」「お友達とトラブルになった」というマイナスの面だけを伝えるのではなく、「保育士の話を聞くことが出来た」「お友達とトラブルになったときに手を出さずに話をすることが出来た」など、出来たことを細かく伝えて成長を共有することが大切です。
また、自宅で育てにくさを感じている場合もあるため、「こうしたら話を聞くことが出来た」というような、援助方法を共有することもADHDをもつ子の保護者支援で積極的に伝えていきたい内容です。
ADHDの子どもは集団生活にうまく入ることが出来ず、保育士としても「気になる子」と思うことがあります。
しかし子ども自身も困難を感じていることが多いため、子どもが無理なく園生活を送れるように援助してあげることが必要です。
子どもによって効果的な援助方法は異なりますが、ぜひ今回紹介した援助方法を試してみて下さい。