秋から冬にかけて始まる気を付けたい感染症について
暑い夏が終わり、過ごしやすい日々が増えてきました。
一方でこの時期は日中と朝晩の気温差や前日との気温差が大きく、体調を崩しやすい季節でもあります。
今回は秋から冬にかけての時期に起こりやすい感染症について詳しく紹介していきます。
RSウイルス感染症
RSウイルス感染症は、RSウイルスの感染による呼吸器の感染症です。
感染と発病を何度も繰り返すので、1度かかっても再び感染する可能性があります。
生後1歳までに半数以上、2歳までにはほぼ100%の乳幼児が感染するとされています。
9月頃から流行が始まり初春まで続く感染症ですが、近年では夏季から流行が始まるようになってきています。
2021年では、2020年にコロナウイルスによる休園や登園自粛などによって免疫が得られなかった子どもが多かったことにより、5月頃から大流行しました。
感染力が強いため、保育園では施設内感染に注意が必要です。
RSウイルスと診断された子が登園するには保護者記入の「登園届」が必要になる園が多いので、受け取り忘れのないよう注意が必要です。
症状
潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日で、発熱、鼻水などの症状が数日続ます。
基本的には軽症で済むことがほとんどですが、初めて感染発症した場合は重くなりやすいと言われています。
初めて感染する乳幼児の約3割は咳がひどくなり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴を伴った呼吸困難が出るなどの症状が現れて、細気管支炎や肺炎へと悪化することがあり注意が必要です。
特に、生後数週間~数か月の子どもが感染した場合には無呼吸発作、急性脳症等の重篤な症状を引き起こすこともあるため保育園の子どもは勿論のこと、育休中などで自宅保育をしているきょうだいへの感染を避けるための注意も必要になります。
予防策
RSウイルスに感染している人の咳やくしゃみなどを浴びて吸い込む「飛沫感染」、玩具や手すりなどについたウイルスへの接触により、鼻や口などの粘膜を通して感染する「接触感染」によって感染します。
RSウイルスは0~2歳までの乳児が感染することが多く、マスクの着用やうがいが難しい場合が多いです。
そのため、しっかりと手洗いを行うことが大切です。
また、保育士による定期的な玩具や手すりなどの消毒を行う事で感染拡大を防ぐことに繋がります。
溶連菌感染症
溶連菌感染症は、「溶血性連鎖球菌」という菌の感染によって引き起こされる病気です。
中でも「A群溶血性連鎖球菌」が主な感染源になりますが、A群血性連鎖球菌にも様々なタイプがあるため、1度感染した後も何度か感染する可能性があります。
季節を問わず感染しますが、秋の終わりごろから春先にかけて流行しやすい感染症で、2~10歳頃に感染する場合が多いです。
溶連菌感染症と診断された子が登園する際には保護者記入の「登園届」が必要になる園が多いので、受け取り忘れのないよう注意が必要です。
症状
多くは咽頭炎(のどの風邪)で、発熱や咽頭痛、舌に赤い発疹が出るイチゴ舌、赤く細かい発疹などの症状が出るのが特徴です。
また、時には嘔吐や咳、中耳炎や皮膚化膿症を起こすこともあります。
リウマチ熱(炎症が関節、心臓、血管、神経等におこる病気)や溶連菌感染後急性糸球体腎炎などの合併症を起こす可能性があるため、園で溶連菌感染症の子が出た場合には掲示などで保護者へ伝え、発熱などが見られた場合には病院で検査してもらうようにお願いすることが大切です。
抗生物質を服用することで症状が改善しますが、溶連菌は体内に残っており再発や合併症の危険があります。
そのため、10~14日間は症状が治まっても抗生物質の内服を続けることが大切なので、園での投薬を行うこともあります。
発症してから2~3週間後に尿検査を行うことで完治の判断をしますが、それまでの間合併症による血尿がでていないか、園でも注意して見てあげる必要があります。
予防策
RSウイルス同様に「飛沫感染」「接触感染」が主な感染経路になります。
そのため、手洗い・うがい・マスクの着用が効果的です。
また、玩具や手すりの消毒を行ったり、保護者に園での感染状況を知らせたり、体調に変化がある場合には家庭保育や早めの受診をお願いするなど、感染拡大を防ぐ事も大切です。
感染性胃腸炎
微生物(細菌やウイルスなど)によって起こる胃腸炎のことです。
子どもがかかりやすい代表的なウイルスが、ノロウイルス・ロタウイルスです。
ノロウイルスが秋の終わりごろから冬、ロタウイルスが冬~春先にかけて流行しやすい感染症で感染力が強く、どの年齢でもかかることがあります。
予防接種の効果により、ロタウイルスよりもノロウイルスの方が流行しやすい傾向にあります。
また、嘔吐や下痢の処理をする保育士が子どもから感染することも多いため、処理の際には細心の注意が大切です。
どちらの場合も診断された子が登園する際には保護者記入の「登園届」が必要になる園が多いので、受け取り忘れのないよう注意が必要です。
症状
ロタウイルスの場合は、下痢、吐き気や嘔吐などの症状が見られます。
以前は「白色便性下痢症」とも言われ、便が白っぽくなることが多かったですが、近年は予防接種の影響もあり白っぽくなることは少なくなっています。
ノロウイルスの場合は嘔吐から始まり、それに続く水様性の下痢や腹痛などが特徴的です。
場合によっては嘔吐を伴わずに下痢のみであったり、胃腸症状の他に筋肉痛や全身の倦怠感、頭痛などを伴うことがあります。
どちらも嘔吐や下痢によって脱水症状を起こす危険もあるので、水分補給を忘れないことが大切です。
1度に多くの水を飲むと嘔吐してしまう可能性があるため、1回あたりスプーン1杯程度の量を10~15分間隔で水分補給するようにします。
予防法
ロタウイルスの場合はワクチン接種によって感染や重症化を防ぐことが可能です。
ロタウイルス・ノロウイルス共に、日々の予防法としては手洗いの徹底が大切です。
また、感染性胃腸炎は保育士が感染する可能性も高いため、下痢や嘔吐処理の際には手袋やマスクの着用、室内の換気を行います。
嘔吐した場所や玩具や机の消毒には次亜塩素酸が効果的です。
また、食器などはミルトンで2分以上消毒を行うのも有効です。
ミルトンがない場合には1Lの水にスプーン1杯のキッチンハイターを入れることでミルトンの代わりになります。
秋から冬にかけては気温差が大きく、咳や鼻水、くしゃみが出やすい時期です。
そのためその飛沫や接触感染により感染症が流行しやすくなります。
手洗いやうがいをこまめに行い、玩具やテーブル、手すりなどの共同部分の消毒を行うことで感染拡大を防ぐことに繋がります。
保育園で子どもが感染することで、自宅できょうだいに感染させてしまったり、保育士自身も感染する可能性があります。
この時期に流行りやすい感染症をあらかじめ保護者に伝えて感染症予防に協力してもらったり、園で流行りだしたら保護者に情報を共有したりすることも大切です。
発熱や嘔吐などの症状が見られた時には、重症化したり合併症を引き起こす可能性もあるため、子どもにどのような症状が見られるのかを保護者にしっかりと伝えることが大切です。
また今回紹介した感染症は、保育園に登園する際に「登園届」が必要になります。
感染拡大を防ぐためにも登園の目安を確認し、しっかりと子どもの様子を確認してから登園届を受け取ることが大切です。