保育士の求人・転職のことならCMEコンサルティングへ/保育士の求人・転職なら【CME保育士】

CME保育士コラム

今更聞けない…処遇改善加算Ⅰ・Ⅱの違いについて

保育士の中には「キャリアアップができない」「給与が低い」といった悩みを抱える人が多いです。

そんな悩みを解決し、保育士を確保するために作られたのが「処遇改善加算」という制度です。

「処遇改善費」として給与明細に記載されていても、実際どのような制度なのかはわからないという人も多いですが、処遇改善加算には、「処遇改善等加算Ⅰ」と「処遇改善等加算Ⅱ」の2種類があります。

今回はこの2種類の処遇改善加算の目的や違いについて、詳しく紹介していきます。


処遇改善加算とは

これまで、保育士の役職というと「園長」「主任」しかいないため、一般企業に比べるとキャリアアップしにくいという意見が多くありました。

キャリアアップができないため、給与もなかなか上がらず、仕事を続けることが困難で辞めてしまう人も多かったです。

保育士を辞めてしまうと待機児童問題にも繋がるため、政府が保育士確保のためにつくった制度が「処遇改善加算」です。

「処遇改善等加算Ⅰ」とは

「基礎分」「賃金改善要件」「キャリアパス要件」の3項目から成る加算制度です。

「基礎分」とは、職員の平均勤続年数によって賃金を改善することです。

各施設や事業所等に在籍する職員1人あたりの勤続年数を全て合算し、対象になる職員の数で平均を出したときの平均経験年数によって加算額が変わります。

非常勤職員を含むすべての職員が対象で、対象職員全体の賃金改善が期待できます。

つまり、離職率の低い職場であればあるほどもらえる処遇改善費の金額が多いため、給与も少し高くなるということです。

これにより、園長や主任という立場を目指していない人でも長く働くことで給与が上がるため、早期離職を防ぎ保育士確保に繋がるという仕組みです。

「賃金改善要件」や「キャリアパス要件」の2項目は働いている保育士ではなく、運営している施設側が主に行うことになります。

「賃金改善要件」は、賃金改善及び実績報告を提出し、基準年度から賃金改善を行っている施設にのみ加算される仕組みです。

「キャリアパス要件」は、職務内容などに応じた賃金体系・職務内容を設定して、資質向上のための具体的な計画策定や計画に沿った研修実施を行ったり、研修機会の確保や職員への周知を行うことで加算される仕組みです(処遇改善等加算Ⅱを取得している施設であれば、キャリアパス要件を自動的に満たします)

賃金改善要件を満たす事で、基礎分基礎分に上乗せで5%(平均勤続年数が11年以上の場合は6%)加算されます。

ただし、キャリアパス要件を満たしていない場合には3%(平均勤続年数が11年以上の場合は4%)と加算率は少なくなります。

内閣府子ども・子育て本部 平成 30 年度 子ども・子育て支援新制度 市町村向けセミナー資料から引用

「処遇改善等加算Ⅱ」とは

キャリアパスと研修体制を構築し、それによって技能や経験を積んだ保育士に対して行われる追加加算のことです。

先ほどの「処遇改善加算Ⅰ」は、法人に加算がされ、それを対象職員全員で分配する仕組みでしたが、「処遇改善加算Ⅱ」は、条件を満たした対象保育士のみが加算額を受け取ることが出来るという違いがあります。

始めにも説明した通り、これまで保育士は、園長と主任保育士にしか役職が存在せず、若手~中堅保育士にはキャリアアップを目指しにくい職業でした。

しかし「処遇改善等加算Ⅱ」の制度によって、新たに「副主任保育士」「専門リーダー」「職業分野別リーダー」といった中堅役職が新設されました。

これらの役職に就くには、要件を満たしたうえで、都道府県が実施している「キャリアアップ研修」を受講する必要があります。

処遇加算の要件は「月額4万円」「月額5千円」の2種類があり、それぞれ対象者が異なります。

月額4万円加算の対象者基準(施設職員の概ね1/3程度)

  • 副主任保育士や専門リーダーなどの職位の発令・職務命令
  • 経験年数がおおむね7年以上である
  • 職務分野別リーダーの経験がある
  • 4分野以上の研修を修了している(副主任保育士の場合はマネジメント研修必須)

※経験年数は「おおむね」なので、各施設の状況などによって決めることができます。

※加算対象者の1/2には確実に月額4万円の処遇改善を行い、残額がある場合には主任保育士や職業分野別リーダーの職員に月額5千円以上4万円未満の範囲で配分することが可能です。

月額5千円加算の対象者

  • 職業分野別リーダーなどの職位の発令・職務命令
  • 経験年数がおおむね3年以上である
  • 担当分野の研修を修了している

※経験年数は「おおむね」なので、各施設の状況などによって決めることができます。

※加算対象者に月額5千円以上の処遇改善を行う(月額4万円加算額の残額も配分可能だが、月額4万円加算者の一番低い加算額を超えない範囲にする必要がある)

分配方法については下記の図を参照にしてください。

内閣府子ども・子育て本部 平成 30 年度 子ども・子育て支援新制度 市町村向けセミナー資料から引用

キャリアアップ研修とは

ここまで紹介した2種類の処遇改善加算において欠かせないのが「キャリアアップ研修」です。

キャリアアップ研修を受講して役職に就くことで「処遇改善加算Ⅱ」の対象となり、さらに「処遇改善加算Ⅰ」の「キャリアパス要件」を満たすことにもなります。

キャリアアップ研修とは、保育士としてのキャリアアップのしくみを構築するために受講する研修のことで、都道府県や都道府県知事によって実施されています。

キャリアアップの研修分野は

  1. 乳児保育
  2. 幼児教育
  3. 障害児保育
  4. 食育とアレルギー
  5. 保健衛生・安全対策
  6. 保護者支援・子育て支援
  7. 保育実践
  8. マネジメント

の全8種類です。

内閣府子ども・子育て本部 平成 30 年度 子ども・子育て支援新制度 市町村向けセミナー資料から引用

目指す役職によって習得が必要となる研修が異なり、職務分野別リーダーの場合は上記で紹介した研修分野の1~6(乳児保育~保護者支援・子育て支援)の中での必要な研修を終了する必要があります。

例えば「幼児保育リーダー」になる場合には「幼児教育」の研修が必須です。

専門リーダーの場合は4つ以上、副主任の場合にはマネジメント+3つの研修を終了する必要があります。

また、研修は経験年数に関係なく受講することが出来ますが、それぞれの役職に就くには「処遇改善加算Ⅱ」で紹介した対象者に当てはまる必要があります。

 

何となく給与明細などで確認していた「処遇改善加算」ですが、詳しい仕組みや制度は知らなかったという方が多いです。

しかし、処遇改善加算について詳しく知っておくことで、賃金改善に繋がったり、キャリアアップについてしっかりと考えることが出来ます。

キャリアアップ研修は1年中受けられるものではなく、受講日が決まっています。

そのため、中堅保育士は勿論のこと、新人保育士も早い時期からキャリアアップについて考えておくことで、効率よくキャリアアップを目指すことが可能です。

例えば経験年数3年から職務分野別リーダーになることが可能なので、自分がどの分野のリーダーになりたいのかを考えておき、優先的に必要な研修を受けておくことでスムーズに専門分野別リーダーになることも可能です。

自分の経験や知識によって少しでも給与が上がるというのはやりがいにも繋がるため、今回紹介した内容を参考に、処遇改善加算について覚えておくと、いざという時に役立ちます。