それって子どもの言いなり?モンテッソーリ教育の正しい知識
近年注目され、家庭や保育園で取り入れる方も多くなってきたモンテッソーリ教育ですが、正しい知識を持たずに行ってしまうと、子どもの言いなりになってしまう事態にも繋がりかねません。
「子どものやりたい気持ちを尊重する」ことと、「子どもの言いなりになる」ことは全くの別物です。
今回はモンテッソーリ教育について詳しく紹介していきます。
モンテッソーリ教育とは
モンテッソーリ教育は、自己教育力を最大限に引き出す教育のことです。
例えば、「歩く」という行為を教えなくても、ずり這いやハイハイ、つかまり立ちなどを修得して自ら歩けるようになっていきます。
子どもが自己教育力を充分に発揮できる環境を用意したり、自由を保障してあげることで、自発的に活動を行い、成長していくことが出来ます。
モンテッソーリ教育の目的は、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間を育てる」こととされています。
モンテッソーリ教育では、
- 0歳から3歳…前期
- 3歳から6歳…後期
と2つに分けて考えられています。
また、それぞれの発達段階には「敏感期」と呼ばれる時期があり、それを元に教育環境を用意していきます。
敏感期とは、子ども自身が自分の成長に必要な事に対して敏感になり、環境の中から自身で選び出して熱心に取り組みながら獲得する時期のことです。
前期について
0歳から3歳までの「前期」と呼ばれる時期は、人生の中で最も吸収力が強い時期と言われています。
今後何年かけても達成できないようなことを簡単に獲得し、社会に適応していくことが出来る時期になります。
この時期の子どもの自己教育力を発揮させるために必要な教育環境は7つあるので、それぞれ詳しく紹介していきます。
- 粗大運動
- 微細運動
- 日常生活の練習
- 言語教育
- 感覚教育
- 音楽
- 美術
粗大運動
運動を習得することは、子どもが自立するための第一歩となります。
ここでの粗大運動とは、鉄棒や跳び箱といった体育的なものではなく、ハイハイや階段の上り下りといった、全身を使った大きな動きのことを言います。
粗大運動では、ずり這いから歩行までの運動の習得を援助するという目的があります。
微細運動
微細運動とは、手や指先を使った運動のことを言います。
落とす・握る・叩くといった動きを通して、微細運動の習得を促すという目的があります。
日常生活の練習
粗大運動と微細運動を複合的にかけ合わせた活動のことを言います。
衣類の着脱や、動植物の世話などの活動のことを指し、日常活動に参加することによって、環境への適応を促していくという目的があります。
言語教育
子どもは言葉の敏感期になると、自分の周囲で話されている母語を修得していきます。
言葉の質や量は環境に左右されます。
そのため、子どもの言葉の発達段階をしっかりと把握しながら細かくステップを用意し、豊かな語彙を養っていくという目的があります。
感覚教育
子どもは無意識に環境を吸収していて、吸収した様々な感覚は、感覚教具に触れることによって子どもの中で整理されていきます。
感覚の敏感期を把握しながら、発達段階や子どもの興味に合わせた感覚教具に触れることで、感覚を洗練させる効果が期待でき、感覚教具を扱うことで子どもの知性の覚醒を促すことにも繋がります。
音楽
音楽は世界中どこにでもあり、子どもは音を聴くことで自然と体を動かしたり、楽器を叩いたり鳴らしたりして表現することを楽しみます。
音楽を聴く・歌う・楽器を鳴らす・踊るといった音楽に合わせて表現することを促すことができるような環境を用意することが大切です。
美術
鉛筆やクレヨンを握って絵を描いたり、粘土で製作したりします。
目や手の協応動作の習得を促したり、子どもの想像力・発想力を思った通りに自由に表現するということを楽しむことを目的とした活動です。
後期について
3歳から6歳までの後期では、上記で紹介した前期に吸収した様々なことを、意識的に整理したり、秩序化していく時期と言われています。
後期の子どもの自己教育力を発揮させるために必要な教育環境は5つあるので、それぞれ詳しく紹介していきます。
- 日常生活の練習
- 感覚教育
- 言語教育
- 算数教育
- 文化教育
日常生活の練習
前期とは違い、後期の日常生活の練習は、運動を完成させることを目的としています。
後期の子どもは大人のことを何でも真似したがる模倣期に入ります。
運動の敏感期と模倣期を活用することで、自身の身体を思い通りにコントロールするための能力を身につける効果があります。
ここで大切なのが、子どもが出来ないことに注意するのではなく、出来ない=やり方がわからないという考えの元、やり方を丁寧・正確に伝えることです。
具体的には、
- 歩く
- 走る
- はさみでものを切る
- ボタンをとめる
- コップに水を注ぐ
- 衣類を畳む
など、実生活に関連する活動を行います。
感覚教育
後期の子どもは、色々な感覚の刺激に対して敏感な時期です。
遠くの飛行機などの小さな物を見つけたり、小さな音でも聞きつけたりします。
感覚の敏感期に、感覚器官を意識して使うことが大切です。
感覚器官が洗練されることで、正確な情報をたくさん収集できるようになり、知性・情緒の発達などが促されます。
感覚教育に用いられる教具には、「段階付ける(順序)」「対にする(反対)」「分類する(仲間わけ)」という、3つの操作があります。
これにより、ものを観察する能力や、ものを考える方法を身につける効果が期待できます。
言語教育
前期では語彙を豊かにすることを目的としていましたが、後期では最終的に文法を使って会話をするまでに至ります。
また、文字を書くということも、ここまで行ってきた日常生活の練習や感覚教育で養った、手や腕のコントロールを利用することで身についていきます。
そのため、子どもは文字に興味をもった時期から、知らず知らずのうちに文字を読んだり書いたり出来るようになっていきます。
算数教育
後期になると、数字やものの大きさなどに興味を示す、数の敏感期がやってきます。
その際に、数に関する教具に触れられる環境があることで、子ども自身が簡単に無理なく吸収していくことが出来ます。
モンテッソーリ教育の算数教具では、単に数を覚えるだけでなく、例えば「2+3=5」を子どもに伝える場合、暗記させるのではなく、そろばんを使って実際に黄色の珠を2つ、赤の珠を3つ動かして全部で何個になるのかを数えるというように、数が手で扱えるようになっています。
文化教育
文化教育はここまで紹介した、言語と数以外の興味を対象とした幅広い分野のことを指します。
動物や植物、歴史や天文など、小学校での理科や社会科などの分野を扱います。
子ども自身の「知りたい」という要求・探求心に応え、興味の種を蒔くことを目的としています。
モンテッソーリ教育では、子どもの「やりたい」「知りたい」という気持ちを尊重していきますが、それ故に「子どもの言いなり」になってしまうというケースも見られます。
モンテッソーリ教育の正しい知識を知ることで、言いなりになってしまうことを防ぐことが出来ます。
特に、「人や自分を傷つけること」「食べ物を粗末にすること」などは、子どもがやりたがっていたとしても理由をしっかりと説明しながらストップすることが大切です。