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CME保育士コラム

ネグレクトかも…保育士ができる対処・対応方法とは

保育士として働くうえで大切なのが、「子どもの健康」です。

子どもの健康を守るためには、日々の保育の中で子どもの様子をしっかりと確認することが大切です。

日々の保育の中で、「不自然な位置にあざがある」「お風呂に入っている様子がない」といった、虐待の可能性を考えてしまうようなケースもあります。

ニュースで取りざたされることも多い虐待の中でも、今回は「ネグレクト」について詳しく紹介していきます。

 

 

ネグレクトとは

ネグレクト(neglect)は、無視する・怠るという意味があります。

「子どもの成長に必要なものを与えない」ということが、ネグレクトの定義となります。

ネグレクトは多くの場合、身体的虐待や性的虐待と異なり、育児の中で子どもにわざと危害を加えようとして起こしたものではないことが多いです。

ネグレクトがおこる原因として、

  • 育児に対する知識や技能が不十分で見きれなくなってしまう
  • うまくストレスを対処出来ずに余裕がなくなってしまう
  • 何かあってもすぐに支援を受けることができない家庭環境
  • 金銭的に余裕がない(貧困家庭)
  • 親に精神障害(うつ病・統合失調症・双極性障害など)や知的障害がある

など、複数の要因が組み合わさって生じることが多いです。

特に、経済的なストレス(貧困)や環境ストレス(周りに頼れる人がいない)といった家庭でおこることが多い傾向にあります。

虐待に「身体的虐待」「性的虐待」「情緒的虐待」と分類わけがされているように、ネグレクトも大きく分けて4つに分類されています。

身体的ネグレクト

身体的なネグレクトでは、

  • 充分な食事を与えない
  • 必要最低限の衣服を与えない
  • 入浴や寝る環境を整えない

というような、子どもが生活していく上で必要なものを与えないことを指します。

情緒定ネグレクト

情緒的なネグレクトでは、

  • 無視する
  • 子どもの存在や発言・行動を、拒否・否定する
  • 子どもと他人(同級生や周りの大人)の関わりを妨げる

というように、愛情を与えなかったり、情緒の発達に欠かせない環境を与えないことを指します。

医療ネグレクト

医療的なネグレクトでは、

  • 子どもが怪我や病気をした際に病院を受診しない
  • 健診などを受診させない

というような、身体的・精神的に必要な治療や充分なケアを子どもに受けさせないことを指します。

教育的ネグレクト

教育的なネグレクトでは、

  • 子どもを入学させない
  • 子どもが登校・登園できる状態なのに出席させない
  • 在宅教育を受けさせない

というような、子どもの教育に欠かせない環境を与えないことを指します。

 

 

ネグレクトを疑う際に保育士が行うべきこと

ネグレクトを疑う子どもの様子として、

  • 身なりが整えられていない(いつも髪の毛がボサボサ・同じ服を着ている・お風呂に入っている様子がないなど)
  • 大人へ異常なほど甘える
  • 低身長や低体重・肥満など、発達が基準から大きく外れている
  • オムツかぶれや湿疹が長期間続く
  • 虫歯が多い(処置していない)
  • 言葉の遅れが目立つ
  • 集団行動が苦手である

等が挙げられます。

わかりやすいのは、身なりが整えられていなかったり、湿疹やオムツかぶれなどの皮膚炎が一向に良くならない、虫歯が多く処置している様子もなかったりといった、見てわかるものです。

言葉の遅れや低身長などは、その子の体質や気質によるものである場合もありますが、家庭で保護者から声を掛けられておらずに言葉の習得が出来ていなかったり、充分な食事を与えてもらえずに低身長や低体重になっていたりする可能性もあります。

また、食事もコンビニや冷凍食品のみで毎日済ましてしまっている場合、反対に肥満になる傾向があります。

甘えや集団行動が苦手なのは、その子の性格による場合もありますが、普段ネグレクトを受けている子どもは、優しさを向けられることに慣れていません。

そのため、優しくしてくれる大人には距離感がわからずに執着して甘えたり、集団行動で他人の気持ちを思いやって行動するのが苦手な傾向にあります。

ネグレクトかもしれないと感じたら、まずはその子の様子をよく見て、おかしいと思わることを記録し、主任や園長などの上司に報告をします。

園医がいる場合には、園医に相談するのもひとつの手です。

園長などを含めて園の中でネグレクトが起きている可能性があると判断した場合、早急に緊急性がなければ、子どもが話を出来る年齢であれば子ども自身に話を聞いたり、保護者と話をして現在の家庭の状況を把握します。

この段階では、ネグレクトが起きていると確定しているわけではないので、ネグレクトが起きていると断定して子どもを問い詰めたり、保護者を責めることは厳禁で、落ち着いた状況で少しずつ丁寧に話を引き出すことが大切です。

子どもと話をする際には、たとえ保育士が「ネグレクトをする酷い親」と感じても、子どもは保護者のことが大好きで、「自分が良い子じゃないから」「ちゃんと出来なかったから」と自分に落ち度があると思っている子どもが多いです。

そのため、「お風呂にいれてもらえないの?」「ご飯食べさせてもらえないの?」と保護者を責めるような聞き方ではなく、「保育園から帰った後は、お家で何をして遊んでるの?」「先生昨日の夜ご飯カレーを食べたんだけど、○○ちゃんは夜ご飯何食べた?」など、普段の会話と同じように会話をしながら生活の様子を確認することが大切です。

子どもの発言からネグレクトを受けていることが明らかになった場合は、それをもとに通報・通告を行います。

保護者との話の中でネグレクトが明らかになる場合の多くは、子育てに対する悩みや、子育てが困難になる様々な事情を抱えていたりします。

保育士が相談を受けることで、ネグレクトの改善や防止につながることもあるので、慎重に話をすることが大切です。

子どもの様子から、すぐにでも専門機関が間に立った方が良い場合や、保護者との相談で改善の様子が見られない場合には、児童相談所や自治体等との連携が必要になります。

通報・通告は、児童虐待の専門機関である児童相談所や、2015年7月から児童相談所共通ダイヤルとして全国的に運用が開始した「189」に連絡をして行います。

通報や通告というとハードルが高く感じて本当に通報していいのかためらってしまうという意見も多いですが、「児童虐待防止法」には、

(児童虐待の早期発見等)

第五条 学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のあるものは、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努め得なければならない。

 

(児童虐待に係る通告)

第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

と記されており、保育士には虐待を早期発見して通告する責任・義務があります。

そのため、ネグレクトが疑われる場合には全職員にその旨を知らせ、子どもや保護者の様子について話し合いや記録を付け、ネグレクトの可能性が高い場合には専門機関に通報・通告することが大切です。

 

 

ネグレクトはデリケートな問題なので、「通告して保護者から何か言われたら」「もしも違ったら…」と思ってしまいますが、保育士は子どもの安全や健康を守る責任があります。

保護者や子どもと丁寧に話をしていきながら、ネグレクトの可能性がある場合には、その家庭がいい方向へ向かうための手助けが出来るようにしていきたいですね。