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CME保育士コラム

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)ってなに?保育士としての関わり方とは

保育園で勤務を続けていると、「集団生活に困難さを感じる子ども」を目にすることがあります。
本人の性格なのか、それとも発達障害なのか、悩むこともあるかと思います。
発達障害は、保育士も気が付きにくい軽度発達障害から、見るからに集団生活が困難そうだと感じる重度発達障害まであります。
また、発達障害と一口に言っても、ADHD・ASD・LDなど、発達障害には様々な種類があります。
今回はASDについて触れながら、ASDの子どもに見られる特徴や、保育士としての関わり方などを紹介していきます。

ASDとは

ASDとは、「Autistic Spectrum Disorder」の頭文字をとったもので、「自閉症スペクトラム障害」という発達障害のことです。

ASDの子どもは、人とコミュニケーションをとることに困難を感じている、自分なりの強いこだわりがあるなどの特徴があります。

この中でも、知的障害を伴わない場合は「高機能自閉症(アスペルガー症候群)」、言葉の遅れや知的障害を伴う場合は「カナー型自閉症」と呼ばれますが、アスペルガー症候群とカナー型自閉症の違いは知的能力の差によるもので、基本的な症状は同じです。

「スペクトラム」には「連続する」という意味があり、発達障害の特徴にはいくつか重なるところがあることから、総称して「自閉症スペクトラム」と呼ばれるようになっています。

自閉症スペクトラム障害の中には、

  • 自閉症(カナー型自閉症)
  • アスペルガー症候群
  • レット症候群
  • 小児期崩壊性障害

などが含まれます。

ASDの子供の特徴

ASDを抱える子どもは、

  • 対人関係がうまくいかない
  • コミュニケーション能力が低い
  • 想像力が低い
  • こだわりが強い
  • 感覚過敏

などの特徴が見られます。

対人関係

ASDの子どもは人と関わることを苦手とする場合が多いです。

相手と視線を合わせる・手をつなぐ・体に触れるといった、保育園では日常的に行われることや、同時に複数人と話をしたり、製作などで同時に複数のことを行う並行処理も苦手です。

また、保育士が急に予定を変更したり、計画されていなかったことを行おうとすると、それに対応できずパニックになることもあり、友達や保育士との対人関係がうまく築けずに困難に感じることが多い傾向にあります。

コミュニケーション能力

ASDの子どもは、表情や声の調子などから、相手が怒っているのか・喜んでいるのかなどを理解することが苦手です。

相手が悲しんでいることがわからず、自分が正しいと思って相手を傷つけたり無神経なことを言ってしまったり、一方的に話をしてしまったりと、コミュニケーションがとれず、対人関係がうまく築けないということがあります。

想像力

先ほどのコミュニケーション能力で相手の気持ちを想像して理解することが難しいのも、想像力が低いことが原因の1つにあります。

また、「どうして」ということを想像することが苦手なので、法律などで決められていない「ルールやマナー」を守ることが難しいというのも特徴の1つです。

映画館では「他の人もいるから静かにしなければ」と周りの人の気持ちを想像して静かに観ることがマナーですが、ASDを抱えていると、楽しければ大声で笑ったり、びっくりすれば大声で叫んだりしてしまうことがあります。

こだわり

こだわりが強い場合には、幼児期は物体へのこだわりが強く、色・かたち・順番などにこだわることが多い傾向にあります。

例えば、「折り紙は毎回赤でないといけない」「ミニカーを並べるときには毎回パトカーが先頭でなければいけない」などです。

また、アスペルガー症候群の場合には、電車に夢中になると図鑑をすぐに覚えて何百種類もの電車を覚えたりすることもできます。

感覚過敏

視覚・聴覚・触覚・味覚などの感覚が鋭すぎる症状のことです。

視覚過敏…特定の模様や景色に対して強いこだわりを示す

例:縞模様、回るもの(扇風機や理髪店のマーク)など

聴覚過敏…大きな音や特定の音に対して過剰な反応を示してパニックを起こしたりする

例:掃除機の音や、運動会のピストル音など

触覚過敏…特定の触感を好んで触り続けたりする

例:タグの感触を好んで触り続ける(服にタグがないとパニックになることもある)

味覚過敏…特定の味に対して過敏になり、強い偏食である

例:白米しか食べない、肉しか食べないなど

保育士の関わり方

実際に保育園で保育士が関わる時に気を付けるべきことを3つ紹介します。

1.理解しやすいように工夫する

例えば「きちんと並んで」という声掛けをした場合、多くの子どもは「今いる子の後ろに並ぶ」ということが理解できます。

しかし、ASDの子どもは「きちんと」がどのようなことなのかを想像することが苦手です。

そのため「○○くんの後ろに並んで」というように、具体的にすべきことを伝えることが大切です。

また、言葉のみの指示を理解することが難しい子もいるため、写真や絵カードなどを活用して、目で見て理解出来るようにしたりすることも効果的です。

2.安心できる環境をつくる

集団生活を苦手と感じる子も多いため、安心できる場所を作ってあげることも大切です。

部屋の隅に子どもの好きなキャラクターのシールなどを貼って、その子の居場所を作ってあげることで、子どもの逃げ場所ができます。

始めは短い時間集団に入り、自分の場所に戻ることを繰り返しながら、集団に入る時間を延ばしていくことで、「自分にはこの場所があるから大丈夫」と安心しながら集団生活に慣れていくことができます。

また、特定の場所にいる時には保育士が声をかけすぎず、見守ることが大切です。

3.予定をあらかじめ伝えておく

急な予定変更や初めての取り組みなどは、対応できずにパニックになってしまうことがあります。

前日や当日の朝に、活動内容を伝えておくことでスムーズに活動に参加することが出来ます。

前日に予定を伝える場合、天気が怪しい場合には「雨なら折り紙」「晴なら散歩」というように、2通り伝えておくことも大切です。

また、担任保育士が休むことが事前にわかっている時には前日の時点で、明日は担任保育士が休みであること・代わりにどの保育士が入るのかを伝えておくことも、パニックを防ぐことに繋がります。

保護者との関わり方

ASDの子をもつ保護者は、育てにくさを感じていることが多いです。

子どもなりのこだわりや順番があり、それが崩れるとパニックになりますが、大人からすると「どうしてそんな事で」と感じることも多くあります。

また、公共の場で騒いでしまうこともあり、他人から心無い言葉をかけられた経験がある人もいます。

そういったASDの特徴から「親失格なのでは」「もっとしっかりしつけができていれば」と、自分を責めてしまう保護者も多くいます。

そのため、園での様子を細かく伝えたり、時にはお家での様子を聞いたりして、連携をとっていくことが大切です。

出来たことなどを伝えることは勿論大切ですが、例えば「パニックを起こしてしまったけど〇〇したら落ち着くことが出来ました」「こういう風になってしまって、こういう援助をしたけど効果がいまいちでした。お家ではどういう風にされていますか?」など、どう対応したのか、効果があったのかなかったのかなどを伝えたり相談したりすることが大切です。

悩みを共有することは、保護者が「一緒に考えてくれている」と安心感を得られることにも繋がります。

ASDの子どもは些細な変化に弱く、他者とのコミュニケーションをとることが苦手なこともあり、「どう関わっていったらいいんだろう」と不安に思うこともあります。

まずはASDについての知識を深め、保護者と子どもの特性を共有することが大切です。

今回紹介した関わり方も参考にしながら、子どもにあった関わり方を見つけてあげて下さいね。