園で見られる自傷行為。無理やり止めるのが正解?
子どもはストレスがかかったり、自分の許容範囲を超えると自傷行為をしてしまうことがあります。
自傷行為が見られた場合、保育士はどのように対応することが正しいのか、また、自傷行為を行ってしまう理由はどのような理由が多いのかなど、保育園における子どもの自傷行為について紹介していきます。
子どもの自傷行為とは
保育園で見られる自傷行為として多いのは、
- 頭を壁や床に打ち付ける
- 自分の頭や顔を叩く
- 自分の腕に噛みつく・つねる
- 髪の毛を抜いてしまう
などが挙げられます。
子どもが自傷行為をする理由としては、自分の思いを言葉にすることができない、やりどころのない気持ちが行動となって現れるなどが主な理由です。
自傷行為というと、自閉症スペクトラムなどの発達障害を抱えている子に多いものというイメージがありますが、発達障害のない子どもでも行う子はいます。
子どもが自傷行為を行う理由
保育園で多い自傷行為を行ってしまう理由について紹介していきます。
1.自分の思うようにいかない
保育園は集団生活の場であることから、1人1人が望むペースで生活することが難しい場面がいくつもあります。
「もっと遊びたかった」「ゲームで勝ちたかった」「違う遊びがしたかった」など、子どもの思うようにいかなかった時に感情が高ぶって自傷行為を行ってしまうケースです。
幼児の場合は、もっと遊びたかったけどそれが難しいことだということも理解できるようになっていて、頭ではわかっているのに我慢することが困難などの理由から自傷行為に繋がってしまいます。
保育士が「また遊びに行こうね」「次はその遊びもしようね」と声をかけても、子どもの「今やりたかった」といった気持ちが解消されるわけではないので、子ども自身の感情のコントロールが難しいのです。
2.友達とのトラブル
友達とトラブルが起きた際に、自傷行為を行ってしまうケースです。
「友達に手を出してはいけない」ということを理解しているからこそ、モヤモヤとした気持ちを自分にぶつけてしまいます。
大人が悔しいと思った時に奥歯をかみしめるのと同じように、やり場のない気持ちを抑えようとする時に、自分の腕を噛んだり、つねったりする自傷行為を行ってしまいます。
3.自分をみてもらいたい
集団生活という場面で、自分だけをみてもらえる時間が家庭よりも少なくなってしまいます。
その際に「自分をみてほしい」という気持ちから自傷行為を行って保育士の気を引こうとしてしまうケースです。
保育士としては自傷行為を行ってい子どもを放っておくわけにはいかないため、声をかけたり止めに入ることが多いことを、これまでの経験などから学び、保育士の気を引きたいとき
に自傷行為を行ってアピールしようとします。
4.思いをうまく言葉にできない
友達や保育士との関わりの中で、自分の思っていることはあるけれど、それをうまく言葉にして伝えることが出来ずに感情の行き所がなくなってしまい、自傷行為を行ってしまうケースです。
保育士がうまく子どもの気持ちを言葉で代弁してあげられればいいのですが、子どもの気持ちがうまく代弁できないと「伝わらない」というもどかしさや苛立ちが自傷行為へと繋がってしまいます。
子どもの自傷行為への対応方法
子どもが自傷行為を行っている時にはどのような対応方法を行えば良いのかについて紹介します。
1.理由を聞く
まずはどうして自傷行為をしているのか、理由を聞きます。
思いが言葉にできずに自傷行為を行っている子はなかなか理由を子どもの口からききだすのは難しいですが、友達とのトラブルや自分の思う通りにいかない場合では、理由を教えてくれる子も多いです。
この時点では大きな怪我のない範囲であれば、無理やり自傷行為をやめさせる必要はありません。
2.気持ちをオウム返し・代弁して受け止める
次に、子どもが伝えた気持ちをオウム返しで反復したり、言葉がうまくでない子どもには状況を見て保育士が言葉で代弁して、気持ちを受け止めます。
例え子どもが間違っていたとしても、感情が高ぶっている時に子どもを否定するように正論を伝えても落ち着くことができません。
子どもが「もっと遊びたかった」と言った時に「でも給食があるから、もう帰らないといけないよ」と伝えるのではなく、「そうだよね、楽しかったからまだ保育園に帰らないでもっと公園で遊びたかったよね」と、子どもの気持ちを反復しながら状況をまとめてあげるような声掛けが大切です。
3.保育士の思いを伝える
自傷行為は無理やりとめようとしても嫌がったり、エスカレートしてしまう可能性があります。
そのため、「腕噛んだら痛いんだよ。大好きな○○くんが痛いの先生悲しいな」というように、保育士の思いを伝えながら自傷行為をやめられるように促していくことが大切です。
また、声掛けで自傷行為を辞めることが出来たときには「先生のお願い聞いてくれてありがとう。嬉しいからぎゅってしていい?」など、スキンシップをとって安心感を与えてあげることもおすすめです。
4.自傷行為の代わりになるものを伝える
子どもが自傷行為をやめて落ち着いた様子であれば、自傷行為の代わりに言葉で伝える・自傷行為をしてしまいそうになったら保育士を呼ぶなど、自傷行為の代わりになるものを伝えていくことが大切です。
例えば友達とのトラブルで自傷行為が起きやすい子の場合は、一人で落ち着く時間が必要なことが多いため、部屋の隅に段ボールなどを設置し、「もし今みたいに気持ちがうわーってなった時には、髪の毛を引っ張るんじゃなくて、あの段ボールの中に入ってごらん。先生あの段ボールに気持ちが落ち着く魔法をかけたんだよ」というように、代わりになるものを提示してあげることが必要です。
自傷行為をせずに気持ちを落ち着けることが出来たときにはたくさん褒めて、自傷行為を少しずつ減らしていくことが大切です。
自傷行為は無理やり止めると子どもの感情が余計に高ぶってエスカレートしてしまう可能性があるため、命の危険や大きな怪我の可能性がない場合には、まずは気持ちを落ち着かせることを優先していくことが大切です。
また、保護者にどのような状況で、どのような自傷行為が見られたのかを必ず報告し、自宅でも自傷行為は見られるのか、園ではどのように対応していこうと考えているのかなどを説明し、家庭とも連携をとって自傷行為を減らしていくことが大切です。